お酒の「飲みやすさ」は度数と甘さの2軸でおおよそ把握できる。度数5%前後の甘口ビールや梅酒ソーダ割りが入門に適し、度数40%超のウイスキーやジンは少量を水や炭酸で希釈すれば初心者も扱いやすくなる。酒税法は酒類をアルコール分1度以上の飲料と定義し[1]、発泡性・醸造・蒸留・混成の4分類に大別する[1]。この法的枠組みに沿って全酒類を度数×甘さのマップ上に配置すれば、自分の好みや体調に合う一杯を論理的に選べる。国税庁の分類[2]と消費統計[3]を軸に、初心者が迷いがちな「どこから始めるか」を可視化し、度数・甘さ・製法の関係を学術的に整理する。
酒税法が定める4分類と度数の基本構造
発泡性・醸造・蒸留・混成の法的定義
酒税法は酒類をアルコール分1度以上の飲料と定め[1]、製法と度数によって発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類の4種類に大別する[1]。発泡性酒類にはビール・発泡酒・その他の発泡性酒類が含まれ、いずれも炭酸ガスを含む点で共通する。醸造酒類は清酒・果実酒(ワイン)・その他の醸造酒に分かれ、糖を含む原料を発酵させてアルコールを得る。蒸留酒類は焼酎・ウイスキー・ブランデー・スピリッツ等を含み、醸造酒を加熱して揮発成分を分離することで高濃度のアルコールを得る。混成酒類はリキュール・粉末酒・雑酒に分かれ、既存の酒類に糖類・香料・果汁などを加えて製造される[1]。
この法的分類は課税の便宜だけでなく、度数と甘さの構造を理解する出発点でもある。国税庁は酒税法に基づく品目と表示基準を所管し[2]、製法上の区分(醸造・蒸留・混成)と法律上の品目との対応を一般向けに解説している[2]。たとえば日本酒は法律上「清酒」と呼ばれ、米・米麹・水を原料とする醸造酒に分類される[1]。ワインは「果実酒」として果実を原料とする醸造酒に位置づけられ、ビールは発泡性酒類の筆頭品目として麦芽・ホップ・水を主原料とする[1]。
醸造と蒸留で度数が分かれる理由
醸造酒の度数が一般に20%以下にとどまる理由は、発酵を担う酵母がアルコール濃度の上昇とともに活動を停止するためである。日本醸造協会誌に収載された研究群は、酵母の耐アルコール性と発酵終点の関係を詳細に報告しており[4]、通常の清酒酵母は15〜16%前後でほぼ発酵を終える。ワインも同様に、糖を完全に発酵させた辛口タイプで12〜14%、残糖を残した甘口タイプで10%前後に落ち着く。ビールは麦芽由来の糖が少ないため、発酵後の度数は4〜6%が中心である[3]。
蒸留酒はこの上限を超える。単式蒸留焼酎(乙類)は芋・麦・米などを発酵させた醪を蒸留釜で加熱し、揮発したアルコール蒸気を冷却して回収する。この工程で度数25〜45%の原酒が得られ、加水調整して市販度数に仕上げる。連続式蒸留焼酎(甲類)は複数段の蒸留塔を用いて高純度のアルコールを抽出し、36%未満に希釈して出荷する[1]。ウイスキーは大麦麦芽の発酵液を単式蒸留器で2〜3回蒸留し、樽で数年以上熟成させることで40〜60%の度数を持つ。スピリッツ(ジン・ウォッカ・ラム等)も蒸留によって40%前後の度数を確保する[1]。
蒸留の原理は日本醸造協会誌や学術プラットフォームJ-STAGE[5]に掲載された論文群で詳しく解説されており、アルコールの沸点(約78℃)が水(100℃)より低いことを利用して濃縮する仕組みが確認できる[4]。この物理的な分離が、醸造酒と蒸留酒の度数差を生む根本要因である。
混成酒の度数と甘さの幅
混成酒類は既存の酒類をベースに、糖類・果汁・香料・薬草などを加えて製造される[1]。リキュールはこの代表で、度数は5%程度の低アルコールタイプから40%超の高度数タイプまで幅広い。梅酒は焼酎またはブランデーに青梅と氷砂糖を漬け込んで作られ、市販品の度数は10〜15%が中心、糖度は10〜20%程度に達する。カシスリキュールやピーチリキュールは度数15〜25%、糖度20〜30%が標準的で、カクテルのベースとして炭酸やジュースで希釈して飲まれる。
酒精強化ワイン(ポートワイン・シェリー等)も混成酒類に分類される場合がある。これらは発酵中または発酵後にブランデーを添加して度数を15〜20%に高め、酵母の活動を止めることで糖を残して甘口に仕上げる。逆に辛口シェリーは発酵を完了させてから酒精強化するため、度数は高いが糖は少ない。
混成酒の多様性は、ベースとなる酒類の度数と添加物の種類・量によって決まる。国税庁の「酒のしおり」[3]によれば、リキュールの課税移出数量は近年横ばいで推移しており、低アルコール飲料やチューハイの需要拡大が背景にある[3]。この統計は、消費者が度数と甘さを自由に調整できる混成酒を、入門用や日常飲用として選んでいる実態を示している。
度数×甘さの2軸マップで全酒類を俯瞰する
横軸に度数、縦軸に甘さを配置する理由
お酒を選ぶとき、多くの初心者が「何が飲みやすいか」を度数だけで判断しがちだが、実際には甘さが体感の飲みやすさを大きく左右する。度数が低くても辛口であれば酸味や苦味が立ち、度数が高くても甘口であれば刺激が和らぐ。そこで横軸にアルコール度数(%)、縦軸に甘さ(糖度または残糖量の多寡)を取り、全酒類を平面上にプロットすれば、視覚的に「自分が今飲める範囲」を把握できる。
以下の表は代表的な酒類を度数と甘さで分類した例である。甘さは「辛口(糖度5%未満)」「中甘口(5〜15%)」「甘口(15%以上)」の3段階で示した。
| 酒類 | 度数(%) | 甘さ | 分類 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 発泡酒(低アルコール) | 3〜4 | 辛口 | 発泡性 | 糖質オフ製品が多い |
| ビール(ラガー) | 4〜6 | 辛口 | 発泡性 | ホップの苦味が特徴 |
| 梅酒ソーダ割り | 5〜8 | 甘口 | 混成 | 炭酸で希釈、糖度10〜15% |
| スパークリングワイン | 10〜12 | 辛口 | 醸造 | 辛口タイプが主流 |
| 白ワイン(辛口) | 11〜13 | 辛口 | 醸造 | 残糖1%未満 |
| 赤ワイン(辛口) | 12〜14 | 辛口 | 醸造 | タンニンが渋味を生む |
| 日本酒(純米吟醸・辛口) | 15〜16 | 辛口 | 醸造 | 日本酒度+3〜+10 |
| 日本酒(純米・甘口) | 15〜16 | 中甘口 | 醸造 | 日本酒度-5〜0 |
| 梅酒(ストレート) | 10〜15 | 甘口 | 混成 | 糖度15〜20% |
| 本格焼酎(芋・麦・米) | 25 | 辛口 | 蒸留 | 水割り・お湯割りが一般的 |
| ウイスキー | 40〜46 | 辛口 | 蒸留 | ハイボール(度数7〜10%)で希釈可能 |
| ジン・ウォッカ | 40〜47 | 辛口 | 蒸留 | カクテルベースとして炭酸・ジュースで割る |
| リキュール(カシス等) | 15〜25 | 甘口 | 混成 | 糖度20〜30%、ソーダ割りで度数5〜10% |
この表から、度数5%以下のゾーンには発泡酒や低アルコールビールが、度数10〜16%には日本酒とワインが、度数25%以上には焼酎とスピリッツが集中していることが読み取れる。甘さの軸を加えると、同じ度数15%でも梅酒は甘口、日本酒は辛口〜中甘口と分かれ、体感の飲みやすさが異なる点が明確になる。
初心者が入りやすいゾーン(度数5〜12%・甘口〜中甘口)
初めてお酒を飲む20歳以上の読者や、アルコールに慣れていない層にとって、度数5〜12%かつ甘口〜中甘口のゾーンは刺激が穏やかで入りやすい。具体的にはビール(度数4〜6%・辛口だが炭酸が刺激を分散)、梅酒ソーダ割り(度数5〜8%・甘口)、スパークリングワイン(度数10〜12%・辛口が多いが炭酸で飲みやすい)、白ワインの甘口タイプ(度数10〜12%・残糖5〜10%)が該当する。
ビールは麦芽とホップを原料とする発泡性酒類で、ラガー酵母を用いた低温発酵が主流である。ホップ由来の苦味(IBU: International Bitterness Units)は製品により10〜60程度の幅があり、苦味が少ないラガーや発泡酒は初心者向けとされる。炭酸ガスが口中で刺激を分散させるため、度数5%でも「飲みやすい」と感じる人が多い。
梅酒は焼酎またはブランデーに青梅と氷砂糖を漬け込んだ混成酒で、市販品の度数は10〜15%、糖度は15〜20%程度である。ストレートでは甘さが強いため、ソーダ割り(梅酒1:炭酸2〜3)にすると度数5〜8%、糖度5〜10%に下がり、初心者が最初に手を出しやすい一杯になる。
スパークリングワインは瓶内二次発酵または密閉タンク発酵で炭酸ガスを溶け込ませたワインで、シャンパーニュ(フランス・シャンパーニュ地方産)やカバ(スペイン産)が代表的である。辛口(Brut)が主流だが、炭酸の爽快感が度数10〜12%のアルコール感を和らげる。甘口タイプ(Demi-SecやDoux)は残糖が多く、度数も10%前後に抑えられているため、さらに入りやすい。
中級者が広げる幅(度数12〜25%・辛口〜中甘口)
お酒に慣れてくると、度数12〜25%のゾーンへ選択肢が広がる。日本酒(清酒)は米・米麹・水を原料とする醸造酒で、並行複発酵という独特の発酵形式を取る。麹がデンプンを糖に分解する糖化と、酵母が糖をアルコールに変える発酵が同時進行するため、醸造酒としては高めの15〜16%に達する[4]。精米歩合(米をどれだけ磨いたかの割合。低いほど多く磨いている)が低いほど雑味が減り、華やかな香りが立ちやすい。日本酒度(糖とアルコールの比重差を示す指標)がプラスなら辛口、マイナスなら甘口に傾く。
ワインは葡萄を原料とする果実酒で、白・赤・ロゼに大別される。白ワインは果汁のみを発酵させるため、タンニン(渋味成分)が少なく酸味が際立つ。赤ワインは果皮・種子ごと発酵させるためタンニンが多く、渋味と複雑味が増す。辛口の白ワインは度数11〜13%・残糖1%未満、辛口の赤ワインは度数12〜14%・残糖1%未満が標準的である。甘口ワイン(貴腐ワイン・アイスワイン等)は残糖10%以上に達し、度数は10〜12%程度に抑えられる。
本格焼酎(単式蒸留焼酎・乙類)は芋・麦・米・黒糖などを原料とし、単式蒸留器で1回蒸留して得られる。度数25%が市販標準だが、原酒は35〜45%に達する。常圧蒸留は原料の香りが強く残り、減圧蒸留は軽快でクリアな味わいになる。水割り(焼酎1:水2〜3)やお湯割り(同比率)にすると度数8〜12%に下がり、食中酒として親しまれる。ロック(氷を入れてストレート)や水割りの比率を調整すれば、自分の体調や好みに合わせて度数をコントロールできる点が焼酎の強みである。
上級者・希釈前提のゾーン(度数25%以上・辛口)
度数25%を超える蒸留酒は、ストレートで飲むと刺激が強いため、水・炭酸・ジュースで希釈するか、少量をゆっくり味わう飲み方が前提となる。ウイスキーはシングルモルト(単一蒸留所の大麦麦芽100%)とブレンデッド(複数の原酒を調合)に大別され、度数40〜46%が標準、カスクストレングス(樽出し原酒)では50〜60%に達する。ハイボール(ウイスキー1:炭酸3〜4)にすると度数7〜10%に下がり、食事と合わせやすくなる。
ジンは大麦やトウモロコシを原料とする蒸留酒にジュニパーベリー(杜松の実)や香草を加えて再蒸留したスピリッツで、度数40〜47%が一般的である。ジントニック(ジン1:トニックウォーター3)やジンソーダにすると度数10〜12%に下がり、爽やかな香りを楽しめる。ウォッカは穀物または芋を原料とし、連続式蒸留で高純度のアルコールを得たあと活性炭で濾過してクリアな味わいに仕上げる。度数40%前後が標準で、カクテルベースとして果汁や炭酸で割られる。
ラムはサトウキビの搾汁または糖蜜を原料とする蒸留酒で、ホワイトラム(無色透明)・ゴールドラム(短期熟成)・ダークラム(長期熟成)に分かれる。度数40%前後が標準で、モヒート(ラム・ライム・ミント・砂糖・炭酸)やダイキリ(ラム・ライム・砂糖)といったカクテルで希釈して飲まれる。
これらの高度数スピリッツは、ストレートで飲むと純アルコール量が一気に増えるため、節度ある適度な飲酒の観点からも希釈が推奨される。厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコール量約20g(ビール中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯相当)を目安に示しており、高度数酒を飲む際はこの基準を意識して量を調整する必要がある。
甘さの正体と度数との関係
残糖・日本酒度・ボディで読み解く甘辛
お酒の「甘さ」は、発酵後に残った糖(残糖)の量で決まる。ワインでは残糖1%未満を辛口(Dry)、1〜3%を中辛口(Medium Dry)、3〜10%を中甘口(Medium Sweet)、10%以上を甘口(Sweet)と分類する慣習がある。日本酒では日本酒度と酸度の組み合わせで甘辛を判断する。日本酒度は水を基準(±0)とし、糖が多いとマイナス(甘口)、少ないとプラス(辛口)に振れる。酸度が高いと味が引き締まり、辛口に感じやすい。
ビールは発酵で糖をほぼ使い切るため残糖は少なく、辛口に分類される。ただしホップの苦味(IBU)が低く、麦芽由来の甘味が残る製品は「甘口ビール」と呼ばれることがある。実際には糖度ではなく、苦味と甘味のバランスで体感の甘辛が決まる。
蒸留酒は蒸留工程で糖が除かれるため、原則として辛口である。ウイスキーや焼酎は樽熟成や原料由来の香りで「甘い香り」を感じることがあるが、糖そのものはほとんど含まれない。リキュールは糖類を添加するため甘口になり、製品により糖度10〜30%と幅広い。
度数が高いと甘さを感じにくくなる理由
アルコールは舌の感覚を麻痺させる作用があり、度数が高いほど甘味や酸味の知覚が鈍る。このため、同じ残糖量でも度数が低いほうが甘く感じやすい。たとえば梅酒を度数15%のストレートで飲むと糖度15%の甘さが強く出るが、ソーダ割りで度数7%に下げると甘さが穏やかに感じられ、炭酸の爽快感が加わって飲みやすくなる。
逆に、度数40%のウイスキーをストレートで飲むとアルコールの刺激が前面に立ち、樽由来のバニラやキャラメルの香りは感じても「甘い」とは感じにくい。ハイボールにして度数10%に下げると、香りの甘さが際立ち、炭酸が刺激を分散させて全体の飲みやすさが増す。
この現象は、度数と甘さを独立した2軸として扱う意義を裏付ける。度数だけで「飲みやすい」を判断すると、辛口の低度数酒(辛口ビール)と甘口の低度数酒(梅酒ソーダ割り)の違いを見落とし、自分の好みに合わない選択をしてしまう。
酸味・渋味・苦味が甘さの体感を変える
甘さの体感は、酸味・渋味・苦味とのバランスでも変わる。ワインの酸味(酒石酸・リンゴ酸・乳酸)は味を引き締め、残糖が同じでも酸が高いと辛口に感じる。赤ワインのタンニン(渋味)は口中に収斂感を残し、甘さを打ち消す方向に働く。ビールのホップ苦味(IBU)も同様で、IBUが高いと残糖が少し残っていても辛口に感じる。
日本酒の酸度は、乳酸・コハク酸・リンゴ酸などの有機酸の総量を示す指標で、酸度が高いと味が締まり辛口寄りに、低いと柔らかく甘口寄りに感じる。日本酒度がマイナス(甘口)でも酸度が高ければ、体感は中口に近づく。逆に日本酒度がプラス(辛口)でも酸度が低ければ、淡麗で物足りなく感じることがある。
この複雑な相互作用を理解すると、「甘口だから飲みやすい」「辛口だから飲みにくい」という単純な図式が成り立たないことが分かる。自分が求める味わいが「甘さ」なのか「酸味の爽快感」なのか「苦味の刺激」なのかを意識すれば、度数×甘さのマップ上で次に試すべき酒類を絞り込める。
マップの使い方と実践例
自分の現在地を把握する
度数×甘さのマップを活用する第一歩は、自分が今「どこにいるか」を把握することである。過去に飲んで「おいしい」と感じた酒類を思い出し、その度数と甘さをマップ上にプロットする。たとえば梅酒ソーダ割り(度数7%・甘口)が好きなら、マップの左下(低度数・甘口)ゾーンが自分の現在地である。
次に、同じゾーン内で別の酒類を試す。梅酒ソーダ割りと同じ度数7%・甘口のゾーンには、カシスソーダ(カシスリキュール1:炭酸3、度数5〜8%・甘口)やピーチフィズ(ピーチリキュール1:炭酸3、度数5〜8%・甘口)が位置する。いずれも甘口の混成酒を炭酸で希釈した飲み物で、梅酒ソーダ割りが好きなら高確率で受け入れられる。
逆に、辛口ビール(度数5%・辛口)が好きなら、マップの左上(低度数・辛口)ゾーンが現在地である。このゾーンにはスパークリングワイン辛口(度数10〜12%・辛口)や白ワイン辛口(度数11〜13%・辛口)が隣接しており、炭酸や酸味の爽快感を求める嗜好に合致する。
度数を上げる/甘さを変える/両方動かす
マップ上で自分の現在地が分かったら、次は「どちらの軸を動かすか」を決める。度数を上げたいなら、甘さは現状維持のまま右方向(高度数側)へ移動する。たとえば梅酒ソーダ割り(度数7%・甘口)から梅酒ロック(度数12〜15%・甘口)へ進むと、甘さは保ったまま度数が上がる。さらに進めば、甘口の日本酒(度数15〜16%・中甘口)や甘口ワイン(度数10〜12%・甘口)に到達する。
甘さを変えたいなら、度数は現状維持のまま縦方向(辛口側または甘口側)へ移動する。梅酒ソーダ割り(度数7%・甘口)から辛口ビール(度数5%・辛口)へ移ると、度数はほぼ同じだが甘さが大きく下がる。この移動で「甘さが苦手」と気づけば、以降は辛口ゾーンを中心に探索すればよい。
両方の軸を同時に動かすこともできる。梅酒ソーダ割り(度数7%・甘口)から日本酒辛口(度数15%・辛口)へ移ると、度数も甘さも大きく変わる。この飛躍は初心者には難しいが、中間地点として白ワイン辛口(度数11%・辛口)を経由すれば、段階的に慣れることができる。
希釈で度数を自在にコントロールする
蒸留酒や高度数リキュールは、希釈によって度数を自在に調整できる点が最大の利点である。ウイスキー(度数40%)をストレートで飲めば1杯30mlで純アルコール量約9.6gだが、ハイボール(ウイスキー30ml:炭酸120ml)にすれば度数8%・総量150mlとなり、ビール感覚で飲める。焼酎(度数25%)も水割り(焼酎1:水2)で度数8%、お湯割り(同比率)で度数8%に下がり、食事と合わせやすくなる。
希釈の比率を変えれば、同じ酒でも複数のゾーンを行き来できる。ジン(度数40%)をトニックウォーターで1:3に割れば度数10%のジントニック、1:5に割れば度数7%の軽いカクテルになる。この柔軟性は、醸造酒にはない蒸留酒の強みである。
ただし、希釈しても純アルコール量の総量は変わらない。ウイスキー30mlをハイボールにしても、摂取する純アルコール量は約9.6gで同じである。飲みやすくなった分、杯数が増えて総摂取量が増えるリスクがあるため、「節度ある適度な飲酒」の基準(1日平均純アルコール量約20g)を意識して量を調整する必要がある。
度数・甘さと健康・適量の関係
純アルコール量で飲酒量を管理する
お酒の健康リスクを考える際、度数や容量ではなく「純アルコール量」で管理することが重要である。純アルコール量(g)は次の式で計算できる。
純アルコール量(g)= 飲酒量(ml)× 度数(%)÷ 100 × 0.8(アルコールの比重)
たとえばビール500ml(度数5%)の純アルコール量は、500 × 5 ÷ 100 × 0.8 = 20gである。日本酒1合180ml(度数15%)は、180 × 15 ÷ 100 × 0.8 = 21.6gとなり、ビール中瓶1本とほぼ同じ純アルコール量である。ウイスキーダブル60ml(度数40%)は、60 × 40 ÷ 100 × 0.8 = 19.2gで、これも同等である。
厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコール量約20gを目安に示している。この基準を超える飲酒を続けると、肝臓疾患・高血圧・がん・依存症などのリスクが上昇するとされる。ただし、近年の疫学研究では「少量でも健康リスクは上がりうる」とする報告もあり、「百薬の長」式の通説を鵜呑みにせず、個人の体質・持病・服薬状況に応じた判断が必要である。持病や服薬中の場合は医師に相談すること。
度数が高いほど総摂取量に注意が必要
度数が高い酒類は、少量でも純アルコール量が多くなる。焼酎(度数25%)をロックで100ml飲むと、100 × 25 ÷ 100 × 0.8 = 20gの純アルコール量となり、1日の目安に達する。ウイスキー(度数40%)をストレートで50ml飲むと、50 × 40 ÷ 100 × 0.8 = 16gとなり、目安の8割を消費する。
希釈すれば1杯あたりの純アルコール量は減るが、飲みやすくなった分、杯数が増えて総量が増えるリスクがある。ハイボール(ウイスキー30ml:炭酸120ml)は1杯で純アルコール量約9.6gだが、3杯飲めば約28.8gとなり、目安を超える。焼酎の水割り(焼酎50ml:水100ml)は1杯で純アルコール量10gだが、2杯で20gに達する。
甘口の混成酒も同様である。梅酒(度数12%)をストレートで100ml飲むと、100 × 12 ÷ 100 × 0.8 = 9.6gの純アルコール量となる。甘さが飲みやすさを生むため、つい量が増えがちだが、2杯で約19.2g、3杯で約28.8gとなり、目安を超える。
休肝日と飲酒ペースの重要性
純アルコール量を守っても、毎日飲み続けると肝臓に負担がかかる。厚生労働省や日本肝臓学会は、週に2日以上の休肝日(アルコールを一切摂取しない日)を設けることを推奨している。休肝日を設けることで、肝臓が代謝産物を処理し、細胞を修復する時間を確保できる。
飲酒ペースも重要である。短時間に大量のアルコールを摂取すると、血中アルコール濃度が急上昇し、急性アルコール中毒のリスクが高まる。一気飲みや飲酒の強要は絶対に避け、1時間あたりの純アルコール量を10g以下に抑えるペースが望ましい。食事と一緒に飲むことで、アルコールの吸収が緩やかになり、血中濃度の急上昇を防げる。
妊娠中・授乳中・未成年・運転前後・服薬中の飲酒は、法律や医学的見地から禁止または強く非推奨とされている。これらの状況では、度数や甘さに関わらず飲酒を避けるべきである。
結論
度数×甘さの2軸マップは、全酒類を俯瞰し、自分に合う一杯を論理的に選ぶための実用的な枠組みである。酒税法が定める発泡性・醸造・蒸留・混成の4分類[1]と国税庁の品目解説[2]を軸に、各酒類を度数と甘さで配置すれば、初心者が入りやすいゾーン(度数5〜12%・甘口〜中甘口)、中級者が広げる幅(度数12〜25%・辛口〜中甘口)、上級者・希釈前提のゾーン(度数25%以上・辛口)の3段階が明確になる。
甘さの正体は残糖量であり、日本酒度・酸度・タンニン・IBU等の指標と組み合わせて体感の甘辛が決まる。度数が高いほど甘味の知覚が鈍るため、同じ残糖量でも度数が低いほうが甘く感じやすい。この関係を理解すれば、希釈によって度数を調整し、自分の好みや体調に合わせて飲むことができる。
健康と適量の観点では、純アルコール量で飲酒量を管理し、1日平均約20gの目安を守ること、週2日以上の休肝日を設けること、飲酒ペースを緩やかにすることが重要である。近年の疫学研究は「少量でも健康リスクは上がりうる」とする知見を示しており[3]、「百薬の長」式の通説を鵜呑みにせず、個人の体質・持病・服薬状況に応じた判断が必要である。持病や服薬中の場合は医師に相談すること。
Sakelore Labとしては、このマップを家庭で印刷して冷蔵庫に貼り、新しい酒類を試すたびにプロットしていく使い方を提案したい。自分の嗜好の軌跡が可視化されれば、次に試すべき酒類が自然と絞り込まれ、無駄な失敗を減らせる。お酒は嗜好品であり、「正解」は人それぞれである。度数と甘さという客観的な2軸を手がかりに、自分だけの「飲みやすい一杯」を見つけてほしい。
参考文献
- 酒税法(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=328AC0000000006 - 国税庁 お酒に関する情報(酒税法上の分類・品目)
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/ - 国税庁「酒のしおり」
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/index.htm - 日本醸造協会誌(J-STAGE収載)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jbrewsocjapan - J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)
https://www.jstage.jst.go.jp/
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