若年層の飲酒リスク|公的にわかること

若年層の飲酒リスク|公的にわかること

若い年代の飲酒リスクは公的データで明確に示されており、東京都内における急性アルコール中毒の救急搬送者のうち51.5%を10代・20代が占めている[1]。20歳未満の飲酒は法律で禁止されており、20歳以上であっても脳がアルコールに慣れていない若年期の多量飲酒は依存症リスクを高める[1]。一気飲みや飲酒の強要は事故につながりやすく、節度ある飲み方の基礎を公的資料の範囲で確認しておく価値がある。

目次

20歳以上でも知っておきたい法的な線引き

二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律が定めること

二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(大正十一年法律第二十号)第一条は「二十歳未満ノ者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス」と定めている[3]。この法律は現行でも効力を持ち、20歳未満の飲酒を明確に禁じている。同条はさらに、未成年者に対して親権を行う者や、親権者に代わって監督する者が飲酒を知った場合には制止すべきことも定めている[3]。酒類を販売・提供する営業者に対しては、20歳未満の者の飲用に供する目的だと知って酒類を販売・供与することを禁じ、年齢確認その他の必要な措置を講じるよう求めている[3]

罰則が及ぶのは誰か

罰則規定を見ると、20歳未満の者の飲用に供すると知りながら酒類を販売・供与した営業者(第一条第三項)は、五十万円以下の罰金に処される[3]。年齢確認その他の必要な措置についても同条は営業者に求めているが、罰則を定めた第三条が挙げるのは第一条第三項と第一条第二項の違反だけで、この措置に罰則は置かれていない[3]。親権者や監督者が飲酒を知って制止する義務(第一条第二項)に違反した場合は科料の対象となる[3]。つまりこの法律は、20歳未満の本人の飲酒を禁じたうえで、罰則は本人ではなく酒類を提供する営業者と、監督する立場にある大人に向けられた構造になっている。

妊娠中・授乳中・服薬中は「法律の禁止」ではない

一方で、妊娠中・授乳中の飲酒や服薬中の飲酒は、この法律における「禁止」の対象ではない。厚生労働省の資料は、妊娠中の飲酒が胎児性アルコール症候群等をもたらす可能性を指摘し、控えることを求めている[2]。授乳期中の飲酒についても、家庭内などの周囲の理解や配慮が必要とされている[2]。体質的にお酒を受け付けられない人(アルコールを分解する酵素が非常に弱い人等)の飲酒についても、避けることが望ましい場合として挙げられている[2]。服薬中の飲酒は薬の効果や副作用に影響しうるため、医師や薬剤師に相談すべき事項であり、法律上の禁止とは別枠で扱う必要がある。

家庭でお酒を楽しむ立場から見ても、20歳未満の飲酒禁止と、妊娠中・授乳中の飲酒を控える推奨とでは、根拠となる法律や資料の位置づけが違う。両者を同じ「禁止」として一括りにすると、それぞれに必要な配慮の重みがぼやけてしまうように感じる。周囲に説明するときも、法律の話と健康上の推奨の話を分けて伝えたい。

若年層の急性アルコール中毒 — 公的データが示す実態

東京消防庁の調査に見る搬送者の年代構成

厚生労働省のe-ヘルスネットは、東京消防庁による急性アルコール中毒救急搬送者数調査を紹介している。令和4(2022)年の調査では、都内の急性アルコール中毒による救急搬送者のうち51.5%を10代と20代の若者が占めた[1]。急性アルコール中毒とは、血中アルコール濃度の上昇によって運動失調や嘔吐を伴う意識障害が起こり、身体や生命に危険が迫った状態を指す[1]。搬送者数は年々増えており、若年者に加えて女性や高齢者でもリスクが高まるとされている[4]

血中アルコール濃度と酩酊の段階

血中アルコール濃度が上がるにつれて、酩酊の状態は段階的に変化する。e-ヘルスネットの記述を整理すると次の通りである[4]

血中アルコール濃度状態の名称特徴
0.02%〜0.1%程度[4]ほろ酔いリラックスした状態
0.3%を超える[4]泥酔期もうろう状態
0.4%を超える[4]昏睡期生命に危険を生じうる状態

どの程度からが急性アルコール中毒となるかについて明確な基準はないが、泥酔以上の状態では意識レベルが低下し、嘔吐や呼吸状態の悪化を伴うとされている[4]

若者が急性アルコール中毒になりやすい理由

e-ヘルスネットは、若者に急性アルコール中毒が多い理由として、(1)脳がお酒に慣れていないこと、(2)危険な飲み方を好むことを挙げている[1]。大学生や新社会人では一気飲みとして飲酒させられ、死亡に至るケースが毎年発生していると指摘されている[4]。この2点は別々の要因だが、どちらも短時間・大量の飲酒が起きたときに重なりやすい。

一気飲みという危険な飲み方とその防止

一気飲みが問題化した経緯

一気飲みは1990年代以降、大学等でも問題とされるようになった[1]。短時間で大量のアルコールを摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上昇し、泥酔期・昏睡期に至る危険が高まる[4]。とくに脳がアルコールに慣れていない若年層では、少量の飲酒でも中毒症状に近づきやすいとされている[1]

大学等での防止の取り組み

こうした状況を受けて、一気飲み防止の取り組みが大学等で広く行われるようになった[1]。取り組みの具体的な制度設計は大学ごとに異なるが、飲酒を強要しない環境づくりという方向性は共通している。20歳以上であっても、一気飲みという飲み方自体が急性アルコール中毒のリスクを直接高める行為であることは変わらない。

気をつけたい場面

一気飲みや飲酒の強要につながりやすい場面としては、次のようなものが一般的に指摘される。

  • 歓迎会・送別会など、集団で杯を重ねる飲酒の機会
  • 「飲めない」「もう十分」と言いにくい人間関係の中での乾杯や回し飲み
  • 短時間で杯を空けることを競う遊びの延長線上にある飲み方

こうした場面では、周囲が飲酒を強要しない・断りやすい空気を作ることが、急性アルコール中毒の予防につながる。

飲酒開始年齢とアルコール依存症の関係

依存症は主に中高年の病気

アルコール依存症は、長年の不適切な飲酒習慣が関係する、基本的には中高年の病気である[1]。しかし、その発症には青年期の飲酒が深く関わっているとされている[1]。依存症そのものは若いうちに診断がつくものではなく、蓄積の結果として中高年で表面化する病気だという点は誤解しやすい。

15歳以下からの飲酒とリスクの違い

e-ヘルスネットによれば、15歳以下からお酒を飲み始めた場合、21歳以上からお酒を飲み始めた場合と比べて3倍以上アルコール依存症になりやすいとされている[1]。この知見は、20歳未満の飲酒を禁じる法律の趣旨とも重なる部分がある。厚生労働省のガイドラインも、20歳未満の飲酒が脳の発育に悪影響を及ぼし、若い頃からの飲酒によって依存症になる危険性が上がると明記している[2]。飲み始めの年齢が低いほどリスクが上がるという構図は、20歳を過ぎてからの飲酒習慣にも無関係ではなく、若いうちの多量飲酒を軽く見ない理由になる。

節度ある飲酒の目安と注意すべき場面

純アルコール量という考え方

厚生労働省のガイドラインは、飲酒量を「純アルコール量」で捉える考え方を採用している[2]。純アルコール量とは、飲んだ酒の量とアルコール度数から算出される、体内に入ったアルコールそのものの重さを示す指標である。ガイドラインは、酒気帯び運転や20歳未満の飲酒のように法律違反に当たる場合と、体質や妊娠等の事情により飲酒を避けるべき場合とを分けて整理している点が特徴である[2]

健康日本21(第三次)が示す方向性

健康日本21(第三次)は「20歳未満の者の飲酒をなくす」ことを目標の一つに掲げ、指標として中学生・高校生の飲酒者の割合を用いている[5]。同計画はまた、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上に該当する者の割合を、生活習慣病のリスクを高める飲酒の指標として設定している[5]。この指標は年齢を問わず用いられるものだが、若年期からこうした量に達する飲み方を続けることが好ましくない点は、これまで見た依存症リスクの知見とも整合する。

妊娠・授乳・服薬時の注意(健康上の推奨、法とは別)

妊娠中の飲酒は、胎児性アルコール症候群等をもたらす可能性が指摘されており、厚生労働省は控えることを求めている[2]。授乳期中の飲酒についても、家庭内などの周囲の理解や配慮が必要とされている[2]。服薬中の飲酒は、薬の効果や副作用に影響しうるため、自己判断ではなく医師や薬剤師に相談することが望ましい。厚生労働省ガイドラインが飲酒を避けるべき場合として挙げる項目を整理すると、次のようになる[2]

  • 20歳未満の飲酒、酒気帯び運転等(法律違反に当たる)
  • 妊娠中・授乳期中の飲酒(胎児・乳児への影響が指摘される)
  • 体質的にお酒を受け付けられない人の飲酒

このうち法律違反に当たるのは20歳未満の飲酒と酒気帯び運転等の2つであり、妊娠・授乳・体質の話は健康上の配慮として別に扱われている点は、繰り返し確認しておきたい。

結論

若い年代の飲酒リスクは、東京都内の急性アルコール中毒搬送者の51.5%を10代・20代が占めるという数字[1]や、15歳以下から飲み始めた場合に依存症リスクが3倍以上になるという知見[1]など、公的資料の範囲だけでも輪郭がはっきりしている。20歳未満の飲酒と飲酒運転は法律で禁止されており、妊娠中・授乳中の飲酒は法律の禁止ではなく厚生労働省が控えるよう求めている推奨事項である[2][3]。この違いを混同せず、20歳以上であっても「若いうちなら大丈夫」と考えずに、純アルコール量を意識した節度ある飲酒を心がけたい。家庭でお酒を楽しむ立場から見ると、一気飲みのような遊びの延長で杯を重ねる場面ほど、上記の数字を思い出す価値がある。次に飲酒の場に立つときは、自分や周囲の一杯が急性アルコール中毒の入り口になり得ることを踏まえ、断る・止める選択を取りやすい空気を作ることが実践的な一歩になる。

参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「若者の飲酒と健康」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-04-002.html
  2. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」別添(2024年2月)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
  3. 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(大正十一年法律第二十号)
    https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC1000000020
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット「急性アルコール中毒」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-001.html
  5. 厚生労働省「健康日本21(第三次)の目標一覧」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001707761.pdf

この記事を書いた人

お酒を飲むより、度数や製法を調べて表にするほうが好きかもしれない、データ気質の編集ラボです。一杯の裏にある歴史と科学を、一次資料を頼りに、できるだけ正確に、たまに脱線しながらお届けします。

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