お酒を飲むと尿酸値は上がりやすく、対策としてはすべての種類のアルコールを減らすこと、なかでもビールは控えることが案内されている[5]。健康診断で尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と判断され、成人男性の20%がこれに該当するという報告もある[1]。飲酒量を減らすと血清尿酸値も低下する方向に動くことが縦断的な研究で確認されており[3]、酒量の見直しは痛風予防の実践的な手段のひとつになる。
お酒と尿酸値の関係――公的資料からわかること
高尿酸血症とは何か
健康診断などで尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合、高尿酸血症と判断される[1]。厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、成人男性の20%が高尿酸血症であるとされ、決して珍しい状態ではない[1]。高尿酸血症は痛風関節炎(尿酸の結晶が関節にたまって炎症を起こす状態)だけにとどまらず、腎障害やメタボリックシンドローム、心血管障害とも関連があると説明されている[1]。原因のひとつにアルコール摂取が挙げられており、高尿酸血症を指摘された場合はお酒との付き合い方を見直す必要があるとされる[1]。
アルコールが尿酸値を上げる仕組み
e-ヘルスネットは、アルコールが尿酸値を上げる理由を複数挙げている。ひとつは、アルコールが体内のエネルギー源であるATPという物質の分解を進め、その分解によってプリン体が増え、やがて尿酸として体内に蓄積するという経路である[1]。もうひとつは、腎臓の機能低下によって尿酸が体外に排出されにくくなるという経路である[1]。つまりアルコールは、尿酸の生成を増やす方向と、尿酸の排出を妨げる方向の両方に働く可能性が示されている。この二重の作用が、お酒を飲む習慣と尿酸値の関係を考えるうえでの出発点になる。
飲酒量を減らすと尿酸値はどう変わるか
毎年の健康診断データを縦断的に分析した研究では、1日あたりの飲酒量が1ドリンク減るごとに、血清尿酸値がおよそ-0.019 mg/dL(95%信頼区間 -0.021〜-0.017)変化するという関連が示されている[3]。1回あたりの変化量自体は小さいが、飲酒習慣の変化と尿酸値の変化が同じ方向に連動していることを示すデータである。家庭で健康診断の結果を毎年見比べている立場からすると、この手の縦断データは「今年だけ飲酒量が多かった年に尿酸値も高かった」という実感と重なりやすく、単発の血液検査よりも継続的な記録の方が変化を捉えやすいと感じる。
プリン体とアルコールは別々に尿酸値を上げる
プリン体を多く含む食品
プリン体は食品中にも広く含まれており、e-ヘルスネットでは白子類、レバー類、干物(マイワシ・マアジ・サンマなど)に多く含まれ、肉・魚全般にも中程度含まれると説明されている[5]。高尿酸血症対策としては、これらプリン体の摂取が多い人はそれらを控えることが有効とされている[5]。あわせて野菜・果物・豆類・全粒穀類をバランスよく摂取すること、尿路結石予防のために水分を多くとることも勧められている[5]。
「アルコール自体」の作用
ここで注意したいのは、プリン体を多く含む食品を避けるだけでは対策として不十分だという点である。e-ヘルスネットは、すべての種類のアルコールの量を減らすこと、特にビールは控えることを対策として挙げている[5]。さらに「焼酎ならば大丈夫」と考える人がいるが、アルコール自体に尿酸を高くする働きがあるため、種類を問わず量を見直す必要があると明記されている[5]。これは前述のATP分解の経路[1]と重なる話で、プリン体の摂取量とは別に、アルコールという物質そのものが尿酸値を上げる方向に働くということを意味している。
酒類別の傾向をどう見るか
ビールと尿酸値
e-ヘルスネットが「特にビールは控える」と個別に名前を挙げているのはビールだけである[5]。ただし、e-ヘルスネットはビールを名指しした理由までは示していない。むしろ別の解説では、ビールだけが原因になる、あるいは低プリン体ビールだから大丈夫だと考えるのは誤りで、アルコールはプリン体の有無にかかわらず尿酸値を上げる働きがあると明記されている[1]。ただし公的資料の中でビールに含まれるプリン体の具体的な数値までは示されておらず、この記事で書けるのは「特に控えるよう案内されている」という範囲までである[5]。
「焼酎なら安心」という通説について
本格焼酎(単式蒸留機で蒸留する焼酎)のような蒸留酒は、蒸留の過程でプリン体がほとんど残らないとされることから「痛風でも焼酎なら大丈夫」という通説が広く知られている。しかしe-ヘルスネットは、この考え方に対して明確に注意を促しており、アルコール自体に尿酸を高くする働きがあるため、すべての種類のアルコールについて量を見直す必要があると述べている[5]。プリン体が少ない酒でも、飲む量が多ければ尿酸値を上げる方向に働くという点は変わらない。
蒸留酒・醸造酒という分類と尿酸値の関係
今回参照した公的資料には、酒類ごとのプリン体含有量の具体的な数値は示されていない。したがって「醸造酒だから危険」「蒸留酒だから安全」といった単純な図式で語れる範囲を、与えられた公的資料は超えていない。書けるのは、酒の種類を問わずアルコールそのものが尿酸値を上げる方向に働くという原則と、ビールについては特に控えるよう案内されているという事実の二点である[1][5]。
飲酒量とリスクをどう考えるか
純アルコール量という指標
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」別添では、飲酒量(純アルコール量)が少ないほど飲酒によるリスクが少なくなるという報告があると紹介されている[2]。同資料は高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などについて、少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまう可能性を示す研究があるとし、大腸がんについては1日当たり20g程度(週150g)以上の量の飲酒を続けると発症の可能性が上がるとする研究結果を紹介している[2]。これは痛風・高尿酸血症そのものについての基準ではないが、「酒の種類より純アルコール量(お酒に含まれる実際のアルコールのグラム量)で飲酒量を捉える」という考え方自体は、尿酸値との関係を考える際にも応用できる枠組みである。
高尿酸血症に伴う他のリスク
高尿酸血症は痛風関節炎だけの問題ではなく、腎障害やメタボリックシンドローム、心血管障害とも関連があるとされている[1]。飲酒量を見直すことを痛風予防だけの話に限定せず、これらの関連疾患も含めた健康管理の一部として捉える視点が、公的資料からは読み取れる。
メタ分析が示す全体的なリスクの大きさ
複数の研究を統合したシステマティックレビュー・メタ分析では、飲酒が高尿酸血症・痛風のリスクを有意に高めることが示されており、オッズ比は1.69(95%信頼区間1.47〜1.94、Z=7.494、p<0.05)で、飲酒者は非飲酒者に比べて69%リスクが高いという結果になっている[4]。性別・年齢・国・研究デザイン・アルコールの種類・診断基準といった条件の違いを踏まえたうえでの分析であり、単一の小規模研究ではなく複数の研究を束ねた結果としてこの数値が示されている点は、一つの根拠として受け止めやすい。
受診とセルフケアの目安
受診を考えるタイミング
最もわかりやすい目安は、健康診断の結果である。尿酸値が7.0mg/dLを超えていれば高尿酸血症と判断される基準値であり[1]、この数値を一度でも超えた場合は、お酒との付き合い方を見直すきっかけになる[1]。痛風関節炎の症状(関節の急な腫れや痛み)を経験した場合や、健康診断で高尿酸血症を指摘された場合は、自己判断で飲酒量を調整するだけでなく医療機関に相談することが基本になる。すでに服薬中の持病がある場合や他の疾患の治療を受けている場合は、飲酒の可否や量について医師に相談する必要がある。
生活習慣で見直せる点
e-ヘルスネットは高尿酸血症対策として次のような生活習慣を挙げている[5]。
- プリン体の摂取が多い人はそれらを控える(白子類・レバー類・干物などが多く含まれる食品にあたる)
- 野菜・果物・豆類・全粒穀類をバランスよく摂取する
- 尿路結石予防のために水分を多くとる
- すべての種類のアルコールの量を減らし、特にビールは控える
- 甘い飲み物やジュースを控える
- 脈が少し速くなる程度の有酸素性運動を行う(10分以上の運動を合計30分から60分程度)
- 肥満がある場合は食事の見直しと運動で肥満を解消する
なお、過度な運動や無酸素性運動を行うと尿酸が産生されやすくなり尿酸値が上昇するため、尿酸がすでに高い人はウォーキング程度の軽い有酸素運動にとどめる必要があるとされている[5]。以下の表は、この記事で扱った数値のうち出典で確認できるものをまとめたものである。
| 指標 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 高尿酸血症の判定基準 | 尿酸値7.0mg/dL超 | [1] |
| 成人男性の高尿酸血症の割合 | 約20% | [1] |
| 飲酒によるリスク(メタ分析) | オッズ比1.69(非飲酒者比69%高リスク) | [4] |
| 飲酒量1ドリンク減少と血清尿酸値の変化 | 約-0.019 mg/dL | [3] |
| 大腸がん発症リスクが上がる飲酒量の目安 | 1日約20g(週150g)以上 | [2] |
結論
公的資料から確認できる範囲で言えるのは、酒の種類を問わずアルコールそのものが尿酸値を上げる方向に働くこと、そのうえでビールについては特に控えるよう案内されていること、そして飲酒量を減らすと尿酸値も低下する方向に動く傾向があることの三点である[1][3][5]。「焼酎なら安全」という通説はこの記事で扱った出典の範囲では支持されておらず、プリン体の少ない酒であっても量が多ければ尿酸値を上げうる[5]。20歳未満の飲酒および飲酒運転は法律で禁止されており、この記事の想定読者は20歳以上である。健康診断で尿酸値が7.0mg/dLを超えている[1]、あるいは痛風関節炎の症状を経験したことがある場合は、自分の判断だけで飲酒量を調整するのではなく、まずは直近の健康診断の結果を確認し、必要であれば医療機関に相談することが次の一歩になる。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと高尿酸血症・痛風」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-012.html - 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」別添(2024年2月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf - Changes in alcohol intake and serum urate changes: longitudinal analyses of annual medical examination database(PMC11250628)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11250628/ - Impact of alcohol consumption on hyperuricemia and gout: a systematic review and meta-analysis(PMC12129753)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12129753/ - 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-007.html
