ジンの選び方|ボタニカルとタイプで選ぶ

ジンの選び方|ボタニカルとタイプで選ぶ

ジンの選び方を決める軸は、蒸留の主役であるジュニパーベリーの香りの強さと、タイプ(ドライ・オールドトム・クラフト)、ボタニカルの系統、価格帯の4点である。EU規則はジンの最低アルコール度数を37.5%と定め、香りの主成分をジュニパーベリー由来と規定している[4]。この2点を知っておくと、家庭でジン・トニックやマティーニに使う一本を選ぶときの判断がしやすくなる。

目次

ジンとは何か-酒税法上の位置づけとボタニカルの役割

酒税法上ではスピリッツに分類される

酒税法第3条第20号は、スピリッツを「第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のもの」と定義しており[1]、ジンはこの分類に含まれる。国税庁の解釈通達も、法第3条第9号ニに該当するものを「スピリッツ(いわゆるジン等)」として整理している[2]。つまり日本の酒税法は、ジンという名称そのものやボタニカルの種類までは規定せず、エキス分とアルコール分の観点からスピリッツという品目に位置づけているにすぎない。ラベルに書かれた「ジン」という表記は、酒税法上の品目名としてはスピリッツの一種を指す通称であり、香りの構成成分や製法の細部は品目区分の外にある。

米国とEUの規定に見るジンの条件

27 CFR §5.144は、もろみからの直接蒸留、蒸留酒の再蒸留、または中性スピリッツにジュニパーベリーを加える方法(他のボタニカルの併用や、それらの浸漬・パーコレーション・マセレーションによる抽出物の使用も認められる)で造られる蒸留酒をジンと定め、主たる特徴的な香りがジュニパーベリーに由来することを要件としている(原文は英語)[3]。EU規則2019/787附属書Iのカテゴリー20も同様に、農業原料のエチルアルコールをジュニパーベリー(Juniperus communis L.)で風味づけしたジュニパー系スピリッツ飲料をジンと定義し、最低アルコール度数を37.5%と規定している(原文は英語)[4]。両者に共通するのは、ジュニパーベリーが単なる副原料ではなく、主たる香りの源として位置づけられている点である。

ボタニカルとは何か

ボタニカルとは、ジンの香りづけに使う植物由来の原料全般を指す語で、ジュニパーベリーのほかコリアンダーシードや柑橘の皮、香草の根などが含まれる。酒税法や国税庁の通達はボタニカルの種類や配合比までは踏み込んでおらず[1][2]、この点は米国・EUの規定でも、ジュニパーベリー以外の芳香性物質は任意で用いるものとして扱われ、製造者の裁量に委ねられている[3]。したがって、何をボタニカルに使っているかは各蒸留所の設計思想の表れであり、規格上の必須要件はジュニパーベリーの存在だけだと理解しておくと選び方の軸がぶれない。

観点日本の酒税法EU規則2019/787米国27 CFR §5.144
分類スピリッツの品目に含まれる[1][2]ジュニパー系スピリッツ飲料「Gin」[4]Gin[3]
主原料の位置づけ規定なし(品目定義のみ)[1]ジュニパーベリー由来の風味づけを条件とする[4]ジュニパーベリーが主たる香りの源であることを条件とする[3]
最低アルコール度数規定なし[1]37.5%[4]抜粋内に記載なし

タイプで選ぶ-ドライジン・オールドトムジン・クラフトジン

ドライジンの位置づけ

ドライジンは、糖類による加糖をほとんど行わず、ジュニパーベリーの香りを前面に出す仕立てのジンを指す語として広く使われている。酒税法上はスピリッツという品目の中に含まれ[1][2]、甘さの有無そのものを規定する条文は今回確認した抜粋の中には見当たらない。したがって「ドライ」という呼称は法令上の品目名ではなく、製法・味わいの傾向を示す慣用的な分類だと理解しておく必要がある。

オールドトムジンの位置づけ

オールドトムジンは、ドライジンよりも甘みを感じやすい仕立てのジンを指す呼び方として使われている。今回確認した酒税法・国税庁通達・27 CFR・EU規則のいずれの抜粋にも、オールドトムという分類そのものを規定する条文は含まれていないため、この記事では法令上の定義がある区分ではなく、市場で使われている慣用的な呼称として扱う。選ぶ際は、ラベルや商品説明に書かれた甘さの傾向を手がかりにするのが現実的である。

クラフトジンの広がり

クラフトジンという呼び方も、法令上の品目ではなく、小規模な蒸留所が独自のボタニカル選定で造るジンを指す市場での呼称である。米国のCFRやEU規則が定めるのは、主たる香りがジュニパーベリーに由来する蒸留酒であることという条件であり[3][4]、蒸留所の規模や生産量を区分の基準にはしていない。クラフトジンを選ぶ場面では、規格上の縛りが緩い分だけボタニカルの個性の差が大きく出やすいと考えておくと、味の予想とのズレが小さくなる。

タイプ甘さ・仕立ての傾向向いている飲み方の例
ドライジン加糖を抑えジュニパーの香りを立てる仕立てが多いジン・トニック、マティーニ
オールドトムジンドライジンより甘みを感じやすい仕立てが多いロックやシンプルなカクテル
クラフトジン蒸留所ごとのボタニカル選定で個性が分かれるソーダ割り、ストレートでの香り比較

タイプの名称が法令上の品目ではなく慣用的な分類だと分かると、初めてジンを選ぶときにラベルの表記に振り回されにくくなる。家庭で試す場合は、まず一本をドライジンから選び、そこからオールドトムやクラフトジンへ広げていく順番が分かりやすいと編集部では考えている。

ボタニカルの個性で選ぶ

ジュニパーベリーは必須の主役

米国CFR・EU規則のいずれも、ジンの主たる香りがジュニパーベリーに由来することを条件としている[3][4]。この点は日本の酒税法・国税庁通達には明文の規定がなく[1][2]、日本国内で流通する「ジン」という名称の酒類についても、ジュニパーベリーの使用量そのものを直接規制する条文は今回の抜粋には見当たらない。そのため、選ぶ際の目安としては、海外の規格が示す「ジュニパーベリーが主たる香りである」という条件を基準に、実際に香りを確かめる姿勢が実用的である。

副原料のボタニカルの系統

ジュニパーベリー以外のボタニカルは、柑橘の皮を使うシトラス系、コリアンダーシードや胡椒などのスパイス系、カモミールやラベンダーなどのハーブ系、アンジェリカルートなどの根茎系に大別して捉えると理解しやすい。27 CFR・EU規則はこれらを製造者が任意で加える香味物質として位置づけており[3][4]、系統ごとの配合比を規定する条文は含まれていない。したがって系統の違いは規格上の区分ではなく、香りの方向性を掴むための実用的な分類として使う。

ラベル・説明表記から読み取るヒント

商品ラベルや裏面の説明に「シトラスを効かせた」「和柑橘を使用」などの記載がある場合、それは酒税法上の必須表示ではなく、ボタニカル構成を伝えるための任意の情報である。酒税法・国税庁通達の抜粋には、ボタニカルの表示方法そのものを義務づける条文は含まれていない[1][2]。選ぶ際は、こうした任意表記を香りの手がかりとして使い、ジュニパーベリーの強さと副原料の系統の組み合わせで好みに近いものを探る進め方が現実的である。

ボタニカルの系統を知っておくと、店頭やオンラインの説明文を読むだけでも香りの方向性がある程度つかめるようになる。家庭で試す場合は、シトラス系を効かせた一本とスパイス系を効かせた一本を並べて飲み比べると、好みの輪郭がはっきりしやすいというのが編集部の実感である。

価格帯で選ぶ

手頃な価格帯の位置づけ

比較的手頃な価格帯のジンは、ジュニパーベリーを中心としたシンプルなボタニカル構成にまとめている例が多いとされる。今回確認した酒税法・国税庁通達・27 CFR・EU規則のいずれにも、価格帯とボタニカルの数や品質を結びつける規定は含まれていないため、価格の違いは規格上の区分ではなく、原料コストや生産規模の違いから生じるものと理解しておく必要がある。初めてジンを選ぶ場面では、まず手頃な価格帯のドライジンでジュニパーベリーの香りそのものを覚えておくと、その後の比較がしやすくなる。

高価格帯・クラフト価格帯の位置づけ

高価格帯のジンは、ボタニカルの種類が多く、蒸留の回数や浸漬時間に手をかけている例が多いとされるが、これも規格上の裏付けがある数値ではなく、市場での一般的な傾向にとどまる。酒税法上の品目区分はスピリッツという枠組みであり[1][2]、価格や製法の手間そのものを品目の条件にはしていない。高価格帯の一本を選ぶ際は、ボタニカルの系統の説明を読み、すでに好みだと分かっている系統(シトラス系・スパイス系など)に近いものから試すと失敗が少ない。

価格帯を選ぶ際の実践的な進め方は次の通りである。

  • まずドライジンでジュニパーベリーの香りの基準を作る
  • 好みの系統(シトラス系・スパイス系・ハーブ系)が分かったら同系統の高価格帯を試す
  • クラフトジンは蒸留所ごとに個性が大きく異なるため、少量から試す

飲み方別の選び方

ジン・トニックに向くタイプ

ジン・トニックは、ジンとトニックウォーターを合わせるロングカクテルで、ジンの香りが炭酸と柑橘の苦みで薄まりやすいため、ジュニパーベリーの香りが強めのドライジンが向いている。ボタニカルにシトラス系を多く使ったタイプであれば、トニックウォーターの柑橘系の風味と重なり、香りの一体感が出やすい。

マティーニなど短いカクテルに向くタイプ

マティーニのように加水が少なく、ベーススピリッツの香りが直接感じられるショートカクテルには、ジュニパーベリーとスパイス系のボタニカルの輪郭がはっきりしたドライジンが向いている。オールドトムジンのように甘みを感じやすい仕立てのジンを使うと、レシピ全体の甘さの設計が変わるため、レシピの意図に合わせて選ぶ必要がある。

ストレート・ロックで飲む場合

ジンをストレートやロックで飲む場合は、加水や炭酸で香りが薄まらないため、ボタニカルの構成がそのまま感じられる。クラフトジンのように個性の強いボタニカル構成のジンは、ストレートやロックで試すと系統の違いがつかみやすい。度数の高い蒸留酒であることを踏まえ、家庭で試す際は少量から始め、味と香りの変化を確かめながら飲む姿勢が現実的である。

飲み方別に選ぶ目安を整理すると、次のようになる。

  • ジン・トニック向き:ジュニパーベリーの香りが強めのドライジン、シトラス系ボタニカル
  • マティーニ向き:ジュニパーベリーとスパイス系の輪郭がはっきりしたドライジン
  • ストレート・ロック向き:ボタニカルの個性が出やすいクラフトジン

結論

ジンはアルコール度数が高い蒸留酒であり、飲酒が認められるのは20歳以上に限られる。飲酒運転も法律で禁止されており、妊娠中・授乳中の飲酒は胎児・乳児への影響が指摘され、厚生労働省が控えるよう強く推奨しているものであり、法的な禁止とは区別して理解する必要がある。持病がある場合や服薬中の場合は、飲酒の可否を医師に相談することが望ましい。編集部としては、家庭でジンを選ぶ際は酒税法が定める品目上の枠組みと、ジュニパーベリーを主役とする香りの規定を出発点に、タイプとボタニカルの系統を組み合わせて考えると選びやすいと感じている。まずは手頃な価格帯のドライジンで香りの基準を作り、そこから系統の異なる一本、あるいはオールドトムやクラフトジンへと少量ずつ範囲を広げていく進め方が、遠回りをせずに好みへ近づく現実的な一歩になる。

参考文献

  1. 酒税法(e-Gov法令検索)第3条第20号(スピリッツの定義)
    https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=328AC0000000006
  2. 国税庁「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」第3条関係(ジン等の取扱い)
    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-02.htm
  3. 27 CFR § 5.144 Gin(GPO 公式 CFR 原本XML・2024年版)
    https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2024-title27-vol1/xml/CFR-2024-title27-vol1-sec5-144.xml
  4. Regulation (EU) 2019/787 ANNEX I カテゴリー20 Gin(蒸留酒の定義・表示/ジン・蒸留ジン・ロンドンジン)
    https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32019R0787

この記事を書いた人

お酒を飲むより、度数や製法を調べて表にするほうが好きかもしれない、データ気質の編集ラボです。一杯の裏にある歴史と科学を、一次資料を頼りに、できるだけ正確に、たまに脱線しながらお届けします。

目次