みりんは酒なのか|酒税法の二重の線引きと、みりん風調味料との違い

みりんは酒なのか|酒税法の二重の線引きと、みりん風調味料との違い

本みりんは酒税法上の「酒類」であり、同法第3条第11号が定める品目「みりん」に該当する、アルコール分15度未満・エキス分40度以上の混成酒である[1]。一方でみりん風調味料は、酒税法が酒類とみなす「アルコール分1度以上の飲料」という基準[3]に届かないところまでアルコール分を抑えて造られており、酒税の対象にならない。同じ「みりん」の名を持ちながら扱いが分かれるのは、1度・15度・40度という複数の数値の線引きが重なっているためである。

目次

そもそも酒類とは何か

酒税法が定める「アルコール分1度以上の飲料」

酒税法上の「酒類」にあたるかどうかは、まずアルコール分が1度以上の飲料かどうかで決まる。国税庁の解釈通達は、この「アルコール分1度以上の飲料」の範囲について、そのまま飲用に供し得るもののほか、水その他の物品を混和してアルコール分を薄めれば飲用に供することができるもの(飲用に供し得る程度まで薄めたときにアルコール分が1度未満となるものを除く)、あるいは水その他の物品と併せて飲用に供することができるものも含むと定めている[3]。瓶を開けてそのまま飲めるかどうかだけでなく、薄めて飲む前提の製品や、他の飲み物と組み合わせて飲む前提の製品まで対象に含める、間口の広い定義になっている。ただし、アルコール事業法上の特定アルコールを精製したりアルコール分90度未満に薄めたりしたもので、明らかに飲用以外の用途に供するものは、この「酒類」の範囲から除かれる[3]

「飲料」の範囲の広さとみりんの位置づけ

この定義を前提に置くと、本みりんがなぜ酒類に含まれるのかが理解しやすくなる。本みりんは製造の過程で米・米こうじに焼酎またはアルコールを加えることでアルコール分が生じ、そのままでも十分に飲用できる度数を保つ。したがって「アルコール分1度以上の飲料」という酒税法の入り口の基準を満たし、酒類の枠組みに入る。逆に言えば、この1度という数値を下回るように造られた製品は、原材料や見た目が本みりんに似ていても酒税法上の酒類には分類されない。この章で確認した一本目の線引きが、後で見るみりん風調味料が酒類にならない理由の土台になる。家庭でみりんを選ぶとき、原材料表示や名称だけでなく、まず「アルコール分1度」という基準を意識しておくと、棚の並びや価格が違う理由が見えやすくなる。

みりんが酒類である理由と、品目「みりん」に入るための追加要件

アルコール分15度未満・エキス分40度以上という数値要件

本みりんが「酒類である」という段階をクリアしたあと、酒税法上の品目として「みりん」を名乗るにはさらに追加の要件がある。酒税法第3条第11号は、みりんを「次に掲げる酒類でアルコール分が15度未満のもの(エキス分が40度以上であることその他の政令で定める要件を満たすものに限る。)」と定義している[1]。品目「みりん」に入るには、アルコール分が15度未満であることに加えて、エキス分が40度以上という基準、さらに政令で定める要件まで満たす必要がある。ここでいうエキス分は、糖類などの不揮発性の成分がどれだけ含まれているかを示す指標であり、本みりんの甘みの厚みを支える数値でもある。アルコール分の上限とエキス分の下限が両方効いてくる点が、「アルコール度数が低ければみりん」という単純な理解では説明しきれない部分である。

四つの製法パターン(イ〜ニ)

酒税法第3条第11号は、品目「みりん」に該当する酒類として、次の四つの製法パターンを列挙している[1]

  • イ 米及び米こうじに焼酎又はアルコールを加えて、こしたもの
  • ロ 米、米こうじ及び焼酎又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの
  • ハ みりんに焼酎又はアルコールを加えたもの
  • ニ みりんにみりんかすを加えて、こしたもの

いずれも共通するのは、米・米こうじ・焼酎またはアルコールという組み合わせを起点にしている点である。ここでいう「こす」は、発酵・熟成させた醪(もろみ)から固形分を取り除き、液体部分を取り出す工程を指す。ハやニのように、すでに出来上がったみりんにさらに焼酎・アルコールやみりんかすを加える型が認められているのは、味の調整や粕の利用など、製造上の実務に応じた選択肢を制度として残しているためと理解できる。家庭で目にする本みりんの多くは、このイ〜ニのいずれかの型に沿って造られた酒類であり、ラベルの原材料表示にも米・米こうじ・醸造アルコール(または米焼酎)といった表記が並ぶことが多い。品目名としての「みりん」を名乗るには、この四つの型のどれかに当てはまったうえで、さらに次章で見る施行令の数値要件までクリアする必要がある。

施行令第5条の中身と、原料として加えてよい物品

エキス分・原料比率・不揮発性成分という三つの要件

酒税法第3条第11号がいう「政令で定める要件」の中身は、酒税法施行令第5条に定められている。施行令第5条は、次に掲げるすべての要件を満たすことを求めている[2]。第一に、エキス分が40度以上であること。第二に、原料中のぶどう糖及び水あめ(あわせて「原料ぶどう糖等」という)の重量の合計が、米(こうじ米を含む)の重量の2.5倍以下であること。第三に、温度15度のときの原容量100立方センチメートル当たりで、原料として使用した原料ぶどう糖等の固形分の重量が、同じ温度・容量における不揮発性成分の重量の80%以下であること。この三つは、甘みのもとになる成分がどこまで米由来か、どこまで添加した糖由来かのバランスを数値で線引きするものであり、米の使用比率が極端に低い製品を品目「みりん」の枠から外す働きを持つ。第二の要件は添加できる糖類の量に上限を設け、第三の要件はその糖分が製品全体の不揮発性成分に占める割合に上限を設けており、二つの数値が異なる角度から同じ目的、つまり米由来の成分を一定以上残すことを支えている。

表:施行令第5条が定める三つの要件

要件内容
エキス分40度以上であること[2]
原料ぶどう糖等の重量米(こうじ米を含む)の重量の2.5倍以下であること[2]
原料ぶどう糖等固形分の比率不揮発性成分重量の80%以下であること[2]

ロの「その他政令で定める物品」として認められているもの

施行令第5条には続きがあり、第3条第11号ロに規定する「みりんその他政令で定める物品」の具体的な中身も同条第2項が定めている[2]。同項は、水のほかに次のものを挙げている[2]

  • とうもろこし、ぶどう糖、水あめ、たんぱく質物分解物、有機酸、アミノ酸塩、清酒かす又はみりんかす
  • 米又は米こうじに清酒、焼酎、みりん若しくはアルコールを加え、又はこれに更に水を加えて、すりつぶしたもの

家庭で本みりんを選ぶ際にこの条文まで意識する必要はないが、原材料表示に米・米こうじ・焼酎(アルコール)以外の記載があっても、それが糖類や米由来の物品であれば、施行令が品目「みりん」の原料として認めている範囲に収まっていることになる。ただし前章の三つの数値要件が同時にかかるため、認められた物品であればいくら加えてもよい、という意味ではない[2]

みりん風調味料が酒類でない理由

アルコール分1度未満という線引き

みりん風調味料が酒税法上の酒類に含まれないのは、冒頭で確認した「アルコール分1度以上の飲料」という酒類の定義そのものに戻って説明できる[3]。アルコール分が1度に届かない製品は、そもそも酒税法が酒類とみなす入り口の基準を満たさない。みりん風調味料は、この1度未満という水準に収まるようアルコール分を抑えて造られた調味料であり、本みりんのように焼酎やアルコールを主要な原料として加える設計にはなっていない。品目「みりん」がアルコール分15度未満・エキス分40度以上という数値要件をクリアした「酒類の中の一品目」であるのに対し、みりん風調味料はそもそも酒類の入り口にすら立たない、という構造の違いになる。

売り場・価格が分かれる仕組み

本みりんが酒類である以上、その製造・販売には酒税が関わり、小売りの現場でも酒類として扱われる。これに対してみりん風調味料は酒税法上の酒類ではないため酒税が課されず、一般の食品と同じ扱いで流通する。スーパーマーケットで本みりんが酒類コーナーに置かれ、みりん風調味料が調味料コーナーに置かれる、あるいは価格帯が異なって見えることが多いのは、この酒税法上の位置づけの違いに由来する部分が大きい。加熱調理の過程でアルコール分がどこまで変化するかという論点は本稿の範囲を超えるが、少なくとも購入時点での分類としては、本みりんは酒類、みりん風調味料は酒類ではない調味料、という整理がまず土台になる。名前も見た目も似た二つの瓶が、酒税法の上ではまったく別のカテゴリーに属している。見分けの鍵は、ラベルに小さく書かれた「アルコール分」の表示にある。

結論:本みりんとみりん風調味料をどう見分けるか

ラベル表示と売り場でわかること

ここまでの整理を踏まえると、店頭で本みりんとみりん風調味料を見分ける手がかりは、次のように整理できる。

  • アルコール分の表示 本みりんはアルコール分が明記され、15度未満の範囲に収まる[1]。みりん風調味料はアルコール分1度未満の水準に抑えられている。
  • 名称の表記 「本みりん」「みりん」と表記されるものは酒税法上の品目要件を満たした酒類であり、「みりん風調味料」「みりん風」と表記されるものは酒類ではない調味料である。
  • 売り場と酒税 本みりんは酒税の対象となる酒類として扱われ、みりん風調味料は酒税の対象外の食品として扱われる。

20歳以上・適量という前提を踏まえた買い分け

本みりんは酒税法上の酒類であるため、20歳未満の者が飲酒することは法律で禁止されているという酒類全般の前提が、本みりんにもそのまま当てはまる。調理に使う分量であれば口にする純アルコール量はごくわずかだが、飲用を目的とした扱いは想定されていない点は、他の酒類と同じ整理で理解しておく必要がある。健康や適量にまつわる論点は本みりん単体で語れるものではなく、飲酒全体の話として厚生労働省など公的機関の情報を参照すべき領域であり、効能や健康効果を断定しない立場を取る。Sakelore Labとしては、本みりんとみりん風調味料の違いを「味の違い」だけで捉えるのではなく、酒税法という制度上の線引きから理解しておくと、原材料表示やアルコール分表示を見たときに納得感を持って選べるようになると考えている。次にみりんを手に取る際は、価格や見た目の前に、まずラベルのアルコール分表示を確認してみるのがよい一歩になる。

参考文献

  1. 酒税法 第3条第11号(みりんの定義)|e-Gov法令検索
    https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000006_20260525_506AC0000000052
  2. 酒税法施行令 第5条(みりんの原料等)|e-Gov法令検索
    https://laws.e-gov.go.jp/law/337CO0000000097_20250401_507CO0000000006
  3. 国税庁 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第2条《酒類の定義及び種類》
    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-01.htm

この記事を書いた人

お酒を飲むより、度数や製法を調べて表にするほうが好きかもしれない、データ気質の編集ラボです。一杯の裏にある歴史と科学を、一次資料を頼りに、できるだけ正確に、たまに脱線しながらお届けします。

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